世界的な経済不況をもたらした新型コロナウイルスの感染拡大は、ハワイの不動産市場にどのような影響をもたらしたでしょうか。そこでハワイの新型コロナウイルス感染対策とあわせて、2020年1~6月のホノルル不動産の取引件数と中間価格をご紹介。さらにリーマンショックなどの過去の不況時におけるハワイ不動産市場の変化から、今後について予測。住宅ローンの歴史的低金利や賃貸物件の賃料低下などについてもご紹介しましょう。
1. ハワイにおける新型コロナウイルス感染対策
2. 2020年1~6月のホノルルの不動産販売件数&価格
3. 新型コロナウイルスによるハワイの不動産市場への影響
4. コロナによるハワイの不動産への影響予測
5. ハワイの住宅ローンが歴史的低金利に
6. 新型コロナウイルスでハワイの賃貸物件の価格も下落
7. まとめ:ハワイの不動産は「買い時」のチャンス
1. ハワイにおける新型コロナウイルス感染対策
まずハワイの不動産市場が新型コロナウイルスによってどんな影響を受けたか知るために、ハワイで行われてきた新型コロナウイルス感染対策について整理してみます。
ハワイにおける新型コロナウイルス感染対策の経過
- 3月5日 ハワイ州デビッド・イゲ知事が非常事態宣言を発表
- 3月6日 1人目の感染者を確認
- 3月8日 2人目の感染者を確認
- 3月17日 ハワイ州知事は感染拡大防止策の追加措置を発表
- 3月18日 ホノルル市内の公園、ナイトクラブの営業停止、飲食店の店内サービス休止を指示(3月20日より実施)
- 3月21日 ハワイに到着した人に14日間の自己隔離を命じる緊急宣言を発表(3月26日より実施)
- 3月23日 ハワイ州全域に不要不急の外出禁止令を発令(3月25日より実施)
- 3月31日 ハワイ諸島間の移動でも14日間の自己隔離を義務化(4月1日より実施)
- 4月23日 5月末まで外出禁止令の延長を発表
- 5月5日 外出禁止令から「Safer-At-Home」命令を発令、感染リスクの低い一部事業の再開を5月7日から許可
- 5月15日 オアフ島ではショッピングセンターなど小売店の営業再開
- 6月5日 オアフ島で飲食店での店内サービス再開
- 6月16日 ハワイ諸島間移動での14日間自己隔離を緩和(ハワイ到着者への隔離は7月31日まで延期)
- 6月24日 8月1日よりハワイ州外からの旅行者へ「事前検査プログラム」を実施することを発表
- 7月14日 「事前検査プログラム」の開始を9月1日に延期することを発表
まず3月上旬、ハワイでは州知事が感染者は確認されていない段階でいち早く非常事態を宣言。その後感染者が数十人に増えていきましたが、すぐに外出禁止令などを発令。大きな動きとしては3月26日から実施された、ハワイ到着者に対する14日間の自己隔離措置です。これによってハワイー日本間の直行便やそのほかの国からハワイに到着する便も運休となり、実質的な観光業の休止となりました。
その後ハワイでは感染者数は減少し、1日の新規感染者数が0人となる日も出るようになり、5月中旬から小売店の再開、6月5日にはオアフ島の飲食店での店内サービスが再開されるなど、感染リスクの低い事業から順に少しずつ経済活動が再開されています。
またハワイの旅行業に関しては、6月16日よりハワイ諸島間での移動に関しては自己隔離措置が緩和され、ハワイ州外からハワイに到着する人に対する自己隔離措置については、9月1日より「事前検査プログラム」が実施されることが決定しました。「事前検査プログラム」は、ハワイ到着の72時間以内にCOVID-19の検査を行い、陰性の証明を提示できると自己隔離措置が免除されるという内容です。
参考:
【ハワイ・アメリカ】2020年3月からの新型コロナウイルス感染者推移
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報(ハワイ州観光局)
2. 2020年1~6月のホノルルの不動産販売件数&価格
では新型コロナウイルスの感染拡大によって、ハワイの不動産市場にどんな影響をもたらしたのでしょうか。まずホノルル不動産協会(Honolulu Board of REALTORS)発表の2020年1~6月のデータから、ホノルルで不動産の取引が行われた件数と中間価格についてみてみましょう。
参考:2020 Market Reports(Honolulu Board of REALTOR)
2020年1月の販売件数&価格
戸建住宅
販売件数 | 中間価格 | |
---|---|---|
2020年1月 | 265(+7.7%) | $770,000(+0.3%) |
2019年1月 | 246 | $767,500 |
コンドミニアム
販売件数 | 中間価格 | |
---|---|---|
2020年1月 | 379(+16.3%) | $429,000(+7.5%) |
2019年1月 | 326 | $399,000 |
2020年2月の販売件数&価格
戸建住宅
販売件数 | 中間価格 | |
---|---|---|
2020年2月 | 247(+18.8%) | $765,000(-3.0%) |
2019年2月 | 208 | $789,000 |
コンドミニアム
販売件数 | 中間価格 | |
---|---|---|
2020年2月 | 316(-1.6%) | $430,000(+3.6%) |
2019年2月 | 321 | $415,000 |
2020年3月の販売件数&価格
戸建住宅
販売件数 | 中間価格 | |
---|---|---|
2020年3月 | 303(+9.8%) | $810,000(+3.5%) |
2019年3月 | 276 | $782,500 |
コンドミニアム
販売件数 | 中間価格 | |
---|---|---|
2020年3月 | 410(-12.2%) | $435,000(+1.4%) |
2019年3月 | 467 | $429,000 |
2020年4月の販売件数&価格
戸建住宅
販売件数 | 中間価格 | |
---|---|---|
2020年4月 | 248(-22.0%) | $809,000(+5.5%) |
2019年4月 | 318 | $766,750 |
コンドミニアム
販売件数 | 中間価格 | |
---|---|---|
2020年4月 | 343(-27.99%) | $450,000(+7.4%) |
2019年4月 | 476 | $418,950 |
2020年5月の販売件数&価格
戸建住宅
販売件数 | 中間価格 | |
---|---|---|
2020年5月 | 248(-22.5%) | $797,000(+3.5%) |
2019年5月 | 320 | $770,000 |
コンドミニアム
販売件数 | 中間価格 | |
---|---|---|
2020年5月 | 254(-51.2%) | $399,000(-4.4%) |
2019年5月 | 520 | $417,500 |
2020年6月の販売件数&価格
戸建住宅
販売件数 | 中間価格 | |
---|---|---|
2020年6月 | 302(-7.6%) | $770,000(-3.8%) |
2019年6月 | 327 | $800,000 |
コンドミニアム
販売件数 | 中間価格 | |
---|---|---|
2020年6月 | 312(-34.0%) | $421,500(-2.5%) |
2019年6月 | 473 | $432,500 |
3. 新型コロナウイルスによるハワイの不動産市場への影響
2020年1~6月のホノルル不動産の販売件数と価格を見てみると、2020年2月まではホノルルの不動産市場は好調で、販売件数も中間価格もゆるやかに上昇を描いてきたことがわかります。
しかしアメリカ本土やハワイで感染者が出始め、様々な経済活動が休止となった3月になると、少しずつ取引件数に影響が出てきました。さらに4月、5月になると外出禁止令の影響が大きく出てきて、5月のコンドミニアム取引件数は前年比でマイナス51.2%と、大きく減少。中間価格についてもマイナスになる傾向が見られるようになってきました。ただし6月にはその落ち込みが若干回復している様子が見られます。
このような状況を鑑みると、オープンハウスなどで不動産販売が思うように実施できなかった影響や、不況により売り出しを控える人、不動産購入を控える人が増えたことが予想されます。これによりハワイの不動産は、新型コロナウイルスの影響で、やや買い手に有利な市場に傾きつつあるようです。
4. コロナによるハワイの不動産への影響予測
では気になるのが、この新型コロナウイルスの影響がいつ頃まで続くのかということです。新型コロナウイルスはワクチンや治療薬が確立されるまで、1~2年は社会的距離を保持するといった、さまざまな規制が求められることが考えられます。そのような長期間にわたり、ハワイの不動産市場にも暗い影を落としていくのでしょうか。
リーマンショック後は数年で復活
2008年のリーマンショックは世界的な不況をもたらした大きな出来事でした。このときのホノルル不動産取引件数の変化は次の通りです。
2007年~2013年のホノルルの不動産取引件数の推移
戸建取引件数 | コンド取引件数 | 総取引件数 | |
---|---|---|---|
2007年 | 3,627(-10.2%) | 5,499(-13.8%) | 9,126(-12.4%) |
2008年 | 2,741(-24.4%) | 3,933(-28.5%) | 6,674(-26.9%) |
2009年 | 2,585(-5.7%) | 3,467(-11.8%) | 6,052(-9.3%) |
2010年 | 3,051(+18.0%) | 3,934(+13.5%) | 6,985(+15.4%) |
2011年 | 2,974(-2.5%) | 4,029(+2.4%) | 7,003(+0.3%) |
2012年 | 3,078(+3.5%) | 4,203(+4.3%) | 7,281(+4.0%) |
2013年 | 3,341(+8.5%) | 4,800(+14.2%) | 8,141(+11.8%) |
※( )は前年比
参考:Annual Residential Resales Data for Oahu(Honolulu Board of REALTOR)
リーマンショックによりハワイの不動産は大きな影響を受けて、2008年には取引件数が前年比でマイナス26.9%と大きく落ち込みました。しかし、翌年にはその落ち込みが軟化し、2年後の2010年には前年比でプラスに転じ、その後も順調に推移していったことがわかるでしょう。
そのため手堅く人気の高いハワイの不動産は、新型コロナウイルスの世界的な蔓延により少なからず影響は受けることは避けられませんが、リーマンショックのときと同様にその影響は最小限に抑えられるのではないかと予想できます。
5.ハワイの住宅ローンが歴史的低金利に
今ハワイで不動産を購入したいと考えている方に追い風になっているのが、住宅ローンの金利。アメリカでは新型コロナウイルスの影響で住宅ローンの金利が、歴史的にも最低水準まで下落。これにより住宅ローンのリファイナンス(借り換え)が急増しているのです。2020年7月1日時点での主要銀行の住宅ローンの金利は次の通り。
参考:Hawaii Mortgage Rates(Honolulu Board of REALTOR)
バンク・オブ・ハワイ
15年固定 2.375%
30年固定 3.000%
セントラル・パシフィック・ハワイ
15年固定 2.250%
30年固定 2.625%
ファースト・ハワイアン・バンク
15年固定 2.500%
30年固定 2.875%
参考:【ハワイの銀行】比較&口座の種類・開設方法・営業時間・ATM利用法
6.新型コロナウイルスでハワイの賃貸物件の価格も下落
また新型コロナウイルスは、ハワイの賃貸物件市場にも影響をもたらしています。観光業を主産業とするハワイでは、観光客がほとんど来なくなった現在、多数の失業者が出ています。そのため家賃を払えなくなった借り手や空室も多く出ていることから、賃料自体を下げて安く貸し出すオーナーが増えているそうです。ハワイ不動産投資を行うには、観光客がほとんどおらず、現地在住の人向けの長期賃貸物件でも定期的な賃料が見込めない可能性もあり、リスクは高いのかもしれません。
7. まとめ:ハワイの不動産は「買い時」のチャンス
まとめとして、ハワイの不動産市場は新型コロナウイルスによって、買い手側に有利な市場になりつつあります。また右肩上がりで上昇していた不動産価格も、新型コロナウイルスの影響で若干マイナスに転じる可能性もあり、さらに住宅ローンの金利が歴史的に見てもかなり低い水準にあることから、不動産を買おうと考えていた方にとっては、大きなアドバンテージとなることでしょう。