ハワイ在住・海外編集者が斬る!紙媒体のライターとWebライターの違い

次々と新しいWebメディアが誕生し、ブログやSNSで文章を書いて情報を発信する人が増えていることを背景に、「ライター」の数が増大してきています。そこで気になるのが、ウェブサイト用の記事を書く「Webライター」と、紙媒体でものを書く「紙媒体ライター」の違い。

元々紙媒体の編集からキャリアをスタートさせた筆者も、今ではほとんどの仕事がWebに変わり、それぞれで求められるスキルに大きな違いがあることに気付かされています。

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1. 紙媒体とWeb媒体の基本的な違い

紙媒体のライターとWebライターの違いを知る上で、まず最初に紙媒体とWeb媒体の違いについて理解しておく必要があります。ユーザーがその媒体(または記事)にどのように接触するのか、どんな読み方をするのか、考えてみましょう。

ユーザーと媒体との接触方法の違い

紙媒体の場合、ユーザーはその媒体を購入した人、または手にした人に限定され、基本的にその媒体に対して興味を持っている人と言えます。

一方、Web媒体の場合は、ユーザーがもっと幅広くなります。そのWeb媒体が好きで定期的に訪れているユーザーももちろんいますが、検索してたまたまその記事に辿り着く、という場合も多いにあり得ます。だから、その媒体の存在すら知らない人でも、その媒体の一つの記事を読む可能性があるのです。

記事の読み方の違い

さらに、記事の読み方についても紙とWebではまったく異なります。紙媒体の場合、ペラペラとページをめくりながら、ユーザーは記事全体を目にすることができるわけです。記事のタイトル以外にも、たとえば印象的な写真が掲載されていれば、それによって興味をひかれることもあるし、記事の後半部分から読む人もいるかもしれません。

しかしWebの場合は、ユーザーは記事を読むためには、タイトルをクリックするというアクションが必ず行われます。さらに、記事を読むためには画面をスクロールするので、必ず「タイトル→リード→本文」と読み進むことになります。

さらに、紙媒体の場合は比較的ユーザーがじっくりと中身を読みますが、Webの場合はスマホで気軽に読める分、指で画面をスクロールダウンしながら、軽く飛ばし読みされる可能性は高いと言えます。

2. 紙媒体ライターに必要なライティングのテクニック

では、紙媒体のライターに求められるライティングスキルにはどんなことがあるでしょうか。

決められた文字数で起承転結を作る

紙媒体とWeb媒体で決定的に違うことは、原稿の文字数に制限があるか無いか。紙媒体の場合、予めデザイナーがラフデザインを作り、写真と原稿の位置を組みます。ライターはそのラフデザインにはまる最適な文字数にあわせて、起承転結のストーリーを盛り込んで文章を展開させる技術が必要です。

そのため、一通り原稿を書き終えた後は、同じ内容の意味でも他の表現方法に言い換えたり、文字数調整のプロセスを行うことになります。

一方、文字数が増えても大きな問題にはならないWeb媒体では、「文字数はだいたい1500字前後」のように、かなりアバウトに発注される場合がほとんどです。

各メディアの表記ルールに従う

大手出版社の紙媒体の場合、それぞれのメディアに最適な表記ルールを設けている場合がほとんどです。たとえば「子供」は「子ども」と表記する、「!」は全角で統一する、「」と『』の使い分け方などです。

Web媒体の場合、ある程度の数の記事を、多くのライターが手がけて作らなければならないという実態のせいか、この表記ルールがゆるいように感じます。しかし紙媒体については、ライターも編集者もそれなりの経験を積んできた人が多く、表記ルールを徹底しており、ライターはそれにならってライティングすることが必要です。

校正力

もし文章の間違いが見つかったとき、紙媒体の場合、一度印刷されたものは「刷り直し」しない限り、訂正することはできません。そのため、誤字脱字の校正は媒体としての信頼にも関わる重要事項で、かなりの時間をかけて行われます。

校正の最終チェックは編集部が行いますが、ライター自身がきちんと校正を行い誤字脱字がない状態で原稿を納品することは当然のことです。

3. Webライターに必要なライティングのテクニック

では、次にWebライターに求められるライティングスキルについて紹介しましょう。

思わずクリックしたくなるタイトル付け

Webの原稿で最も重要なのが、タイトルです。膨大な記事が日々生まれているWebの世界で、ユーザーにその記事を読んでもらうためには、「思わず読みたくなる・クリックしたくなるタイトル」が必要です。

タイトル付けについては、多くのWebメディアで編集者の仕事(力量)に関わると言っても過言ではありませんが、ライター側にも一工夫こらしたタイトルを提案できる力が求められます。

読み進みたくなるようなリード文章

Webの記事の難しい点は、タイトルをクリックしたユーザーでも、記事をパッと見て「面白くなさそう」「自分が探していたものとは違う」などと思ったら、すぐにその記事から離脱して他のページへ行ってしまう可能性が高いこと。

そのため、ユーザーの離脱を防ぎ、いかに最後まで記事を読んでもらうかを考えると、タイトルの次にあるリード文章が大切になります。

リードでは、この記事がどんな内容のものか簡潔に説明するのが基本。リードの文字数はあまり多すぎず、各Web媒体ごとに差はありますが(ページのデザイン等も関係しますが)、だいたい150~200字がベターでしょう。

SEOキーワードを入れ込む

Webの記事を書く際には、SEO効果があることも求められます(メディアによって、SEO対策がされている記事とそうではない記事とを分けて制作している場合も多くあります)。その際、ライターのスキルとして求められるのが、SEO効果の高い記事を作る力。

そのためには、SEOのキーワードを洗い出して、効果的にSEO効果の高いキーワードをタイトル、見出し、原稿内に入れ込むことが大切です。記事の構成力はもちろん、自然な形でキーワードを使用するライティング力が必要になります。

さらに、SEO効果が高い記事には、ある一定の文字数(一般的には3000字程度)が必要になりますが、不要な形容詞を連発したり、同じことを繰り返し記述したり、単なる文字稼ぎにしかならない長文は、ユーザーにとって読みやすい・読んでためになる記事にはなりません。

HTMLの基本知識

ワードプレスなどのWebシステムに原稿を入れる作業まで、Webライターに求められることも一般的。そのため、最低限のhtmlの知識を持っていると編集者側やメディア運営側に喜ばれます。具体的には、見出し、リンク、引用などのタグを理解して使いこなせることは基本となるでしょう。

企画力

Web媒体は、月間誌・週刊誌などの紙媒体と違って、365日記事を配信し運営しています。従って、作る記事の数も紙媒体に比べると大幅に多くなります。そのため、編集者が企画を細かく練った上でライターに依頼するという、紙媒体の従来のフローとは異なり、Webライター自身が記事の企画から提案する場合も少なくありません。

「このテーマならどんな展開で1本の記事に仕立て上げられるか?」「2つの記事に分けたほうが深く掘り下げることができて面白いのではないか?」「同じテーマでも切り口を変えることで、他にはない視点で記事が展開できるのではないか?」…などと、企画する力がライターに必要となります。

写真と原稿の内容を合わせる

紙媒体や従来のメディアの記事の作り方であれば、原稿はライターが、写真はフォトグラファーが担当するのが当たり前でした。しかしスマホカメラの性能が上がり、誰もが気軽に写真を撮れるようになったこと、さらにWebの場合は印刷物に比べて高画質の写真が必要ないことなどを背景に、Web媒体ではライターが写真を用意することも多くあります。

たとえば料理の手順を紹介する記事なら、「材料を全部そろえた写真を最初に入れよう」、「ポイントとなる野菜の切り方は写真付きで説明した方がわかりやすい」などと、原稿と合わせてどんな写真があったらユーザーにわかりやすいか考えることが大切になります。

話題性の高いテーマをキャッチする力&スピードあるライティング

Web媒体の動きはとても速く、トレンドとなる話題があればそれに関連する記事を素早く作ることで、サイトのアクセスアップに繋げることができます。世間やネット上で話題になっていることに常にアンテナを張り巡らせておき、記事化したらたくさんの人が読みそうと思うテーマを見つけ出し、スピード感を持ってライティングする力が必要となります。

4. 紙媒体ライターとWebライター共通で求められるテクニック

紙媒体とWeb媒体で、作り方にかなりの違いがあることがわかっていただけたかと思いますが、どちらにも共通するテクニックもあります。

論理的な思考と文章構成力

ユーザーが読んで面白いと思う文章には、「興味のフックとなるものがあり→それを説明する展開→最終結論」という起承転結が必ず必要です。そのためには、記事全体の構成を論理的に組み立てて、それを文章で作る力は絶対的。これは紙であろうとWebであろうと、ライターを名乗るのであれば必ず必要な技術です。

情報収集

自分自身の体験をもとにする記事以外は、文章を作るためにはその元となる情報が必要で、ライターは情報収集から始めなければいけません。インタビューなどを行って人から聞きだすことはもちろん、様々なウェブの情報を確認したり、参考文献を読んだりして、必要な情報を集めて、それをどうわかりやすくユーザーにまとめて伝えるかが、ライターの腕の見せ所です。

情報の裏取り

ネットが発達したおかげで、ウェブで知りたい言葉を検索すればありとあらゆる情報が簡単に手に入るようになりました。しかし、その情報が本当に信頼できるものか、そうでないかを見分ける力が、検索する側に必要となります。

例えば、個人のブログやネットの掲示板に書かれている情報は、それが正しいか全くわかりません。一方、公的機関が発表している内容、調査結果などは信頼できる情報と判断できます。ネットなどで耳にした噂について原稿の中で触れたいのなら、その噂が本当なのか自分で調べて、本当に信頼できる情報源を見つけたときにのみ書くことが鉄則です。

「本当かウソなのかわからない情報を、そのまま記事にする」ということは、プロのライターがするべき仕事ではありません。プロのライターならば、自分が書いたことに責任を持つのが本来の姿であると、筆者は考えます。

正しくわかりやすい日本語を書く力

日本人ならば誰でも正しい日本語が書けるかというと、答えはNOです。特に難しいのが、「てにをは」と呼ばれる助詞と、句読点の使い方。助詞が一字違うだけで、句読点の位置が違うだけで、文章の内容が大きく変わってしまうのです。文章の内容を正しく読み手に伝えることは、ライティングの基本中の基本です。

各メディアのトーン&マナーに合わせて書き分ける

それぞれの媒体によって、ターゲットとするユーザーがどんな人なのか、どんな雰囲気の媒体にしたいのかが異なります。

例えば同じコスメを扱う媒体であっても、女子高校生向けの媒体と富裕層をターゲットとした媒体では、媒体全体のデザインから記事で使われている文章のテイストも全く異なります。

広告業界では「トーン&マナー(略語でトンマナ)」と呼びますが、それぞれのトンマナに合った文章に仕上げることがライターに求められます。さらに、トンマナにあわせて様々なテイストの文章を書き分けられるのが、プロのライターと言えるでしょう。

5. 広告記事・報道記事との違い

最後に、広告記事と報道記事についても簡単にご紹介しておきます。これは紙媒体、Web媒体という線引きとは異なりますが、記事の書き方がこれまで紹介した方法とはまた違います。

広告記事では広告主が伝えたいこと・紹介したいことが第一

紙媒体でもWeb媒体でも広告記事を作ることがありますが、この場合の主体は広告主。広告を出稿する企業(人)が、何をユーザーに伝えたいのか、何を紹介したいのか、ということを汲み取って記事にまとめます。広告記事ではない編集記事の場合、ライターや編集者の主観が入って記事化することも時としてありますが、広告記事ではそのようなことはありません。

報道記事では事実を伝えることが第一

報道記事は、エンターテイメント性の高いメディアとは異なり、記事の作り方が大きく異なります。報道記事の使命は、どんなことが起きたのか、事実を正しくユーザーへ伝えること。だから記事の書き方についても、事実(結論)を簡潔に冒頭で述べることが普通で、よけいな形容詞をつけて文章を飾り立てるようなことはしません。

 

日本労働組合総連合会が2016年12月に発表した「クラウド・ワーカー意識調査」によると、クラウドワーキングにおける仕事内容で最も多いのが、文書・データ入力、事務、伝票整理等で、それに次いで2番目に多いのが、「ライター」でした。ライターの需要は今後も増えていくと思われますが、ライティングの力を上げていきたいとお考えの方などは、ぜひこの記事を参考にしてみてはいかがでしょうか。

参考:日本労働組合総連合会『クラウド・ワーカー意識調査』 (
https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20161222.pdf?1226)

参考:ハワイ在住編集者が斬る!コピーライターとライターの違いとは
参考:コンテンツが光る!編集者が考える「売れるテーマの切り取り方」
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