アメリカの医療は世界でも最高水準であり、自国では対処できない難病を抱えた人がアメリカに渡り最新の治療を受けるというパターンも決して少なくないでしょう。しかしその一方で、アメリカの医療の闇とも言えるのが、高額すぎる医療費です。日本人の感覚では想像を絶する、アメリカの医療費の実態に迫ってみます。
外務省のウェブサイト内『世界の医療事情』によると、アメリカ、ニューヨークで次のようなケースがあったそうです。
アメリカ全体で医療費が高額なのに、ニューヨークのマンハッタン地区は他のエリアに比べて2~3倍も高いそう。一般的な初診料だけで$150~300、専門医の受診で$200~500、入院すると一日$数千の請求となります。
数日間の入院で数万ドル(日本円で数百万円に該当)もするなら、1ヶ月近く入院した場合、1,000万円を超えてしまうというのも決して嘘ではないのでしょう。
では次に、ハワイで生活を送る筆者が実際に現地の病院に行き、請求された金額の実例をご紹介します。
運よくこれまでに大きな病気や入院は経験がなく、病院に行く機会は少ない筆者ですが、その中で最も高い治療費を払ったのが虫歯治療でのこと。
そのときは2本も虫歯があることがわかり、1本は$300近く、もう1本は$200程度だったと記憶しています。日本に帰国する予定があれば、日本の歯科クリニックでの治療も選択肢として考えましたが、そのような予定もなく、やむなく治療をお願いしました。ちなみに、親知らずの抜歯はいくらかかるか聞いたところ、専門医での処置になり「おそらく1本$600~700だろう」とのことでした。
そのほか、専門医による眼科の検査で$160近くの請求がきたこともありました。このときはあまりの金額に驚いて、「本当に合ってますか?」と病院に問い合わせしたほど。虫歯もこのときも、すべて保険に加入した上で請求された金額です。
またホームドクターに診察をしてもらった場合、保険に入っていても自己負担として「Co-Payment」が求められます。これがだいたい$12~20程度。日本だと簡単な診察だけなら1,000円以下で済む場合もあると思いますが、やはり全体的に医療費が高めであることがわかりますね。
筆者が加入していた保険には、歯科の検診と歯垢クリーニングが、年に2回無料で受けられました。このような検診で、事前に虫歯を防ぐという“予防歯科”、“予防医学”の考えが当たり前なんですね。
アメリカは訴訟大国で、生活や仕事などさまざまなことが訴訟の対象となります。そしてそれは医療の現場でも同様。そのため医師や病院が支払う損害賠償保険料が高く、その分医療費に跳ね返っていると言われています。
日本であれば抜歯も虫歯治療も歯科医師が行いますが、上述したように、アメリカの場合は抜歯については別の医師が担当します。このように、医師の専門分野が細分化されているのが、アメリカの医療現場の特徴。
その分野のスペシャリストである医師に診てもらえることは、患者にとって診断への信頼が深まるというメリットがありますが、病気や症状によって複数の専門医の診察を受ける場合は、患者が支払う治療費も当然増えてしまうというデメリットが付きます。
全国民がなんらかの公的医療保険に加入するのが、日本の保険制度。しかしアメリカにはそのような制度はなく、特に所得が低い家庭などを中心に保険に未加入の人々が多くいることが問題視されており、無保険者の削減を目的として成立したのが、2010年の医療保険改革法、通称“オバマケア”です。
これによって無保険者の数は減少したものの、医療費や保険料の値上げにつながっているという事実があります。大和総研『経済構造分析レポートNo.53』によると、2014年の医療費は前年比5.3%で毎年右肩上がりに増加。2010年から2015年の5年間における物価上昇率は10%、賃金は9%に対して、医療保険料は27%も上がっています。
現在の大統領であるトランプ氏は、この保険制度についての見直し案を2017年3月に提案。しかし反対派が多く一旦、見直し案は撤回されていますが、今後も現在の保険制度になんらかの変革がもたらされる可能性は否定できないでしょう。
参考:海外旅行保険でも大丈夫!「日本語が通じるハワイの病院」一覧
米国は欠点だらけ…?暮らしてわかる「アメリカVS日本」医療制度の違い8つ
参考:大和総研『経済構造分析レポートNo.53』 (
http://www.dir.co.jp/research/report/japan/mlothers/20161101_011369.pdf)
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