海外就職や海外移住に憧れる方が直面する、最も高いハードルとなるのが、ビザと現地での仕事を取得することです。しかし各国の厳しいビザ取得の道のりの中で、「運」だけで永住権を取得できる方法があります。それが、アメリカが行っている「移民ビザ抽選プログラム」です。
名前の通り、抽選でビザが当たるシステムで、永住権を取得できれば就労ももちろん可能となります。実は筆者は、この抽選プログラムで永住権が当たり、ハワイへ移住した一人です。
グリーンカード抽選プログラムの概要
毎年多くの移民を受け入れており「移民国家」と言われる国、アメリカ。アメリカが発行するビザには実に多くの種類が存在しますが、その中の一つが、「移民多様化ビザプログラム(グリーンカード抽選プログラム、DVプログラム)」と呼ばれるものです。
抽選はコンピューターによってランダムに行われれるため、まさに「運」で手にできるビザと言えるのです。このシステムに応募できるのは、アメリカへの移民の割合が低かった国の人々。
過去5年間に5万人の移民がアメリカへ移住した国については、このプログラムの対象から外されます。2020年度に申込みが行われる「DV2022」では、カナダ、イギリス、インド、韓国などは除外国に該当し、日本は対象外の国には入っていませんので、日本に国籍がある方は応募できます。
グリーンカード抽選プログラムの応募資格
グリーンカード抽選プログラムに応募するために必要な資格は、次の1と2です。
- 応募する本人または配偶者が対象国の出身であること。
- 高校卒業または同等の教育を修了している必要があり、小、中、高校での12年間の公式の教育課程を修了したことを証明できること。もしくは、最低2年間の研修か実務経験を必要とする職業(米国労働省の定める基準に準ずる)に過去5年以内に2年以上従事していること。
グリーンカード抽選プログラムの実施期間
グリーンカード抽選プログラムは1年に1度、毎年秋に実施されます。2020年に実施される「DV2022」については、応募期間が2020年10月7日から2020 年11月10日正午(東部標準時間)です。
グリーンカード抽選プログラムの抽選結果
抽選結果がわかるのは、翌年の5月頃から。応募の際に発行された自分の確認番号を使って、毎年5月上旬から9月頃まで、グリーンカード抽選プログラムのサイトで、自分の当選情況を確認することができます。もし当選していれば、その後の面接などのプロレスについての案内があります。
グリーンカード抽選プログラムの倍率は1.26%
アメリカ国務省のウェブサイトで発表されているデータによると、DV2013に日本から応募した人は51,775人、DV2014は51,646人、DV2015は50,501人と、毎年5万人前後が応募しています。そのうち当選したのは、DV2015は636人と発表されています。日本だけで考えると当選確率は1.26%ということになります。
さらにDVプログラムで取得したDVビザによって、アメリカに日本から実際に移民となって入国した人の人数は、2014年が269人で、データが公開されている2005年から2014年までで毎年200人前後となっています。当選する確率がわずか1%で、実際に移民として移住する人は、そこからさらに半分以下に減っているということです。
グリーンカード抽選プログラムの当選確率を上げる方法
コンピュータでランダムに行われる抽選ですから、当選の確率は変わらないと思いきや、実は当選確率を上げる方法があります。それは夫婦で応募することです。夫婦であればどちらか1人が当選すれば、パートナーも自動的にビザ取得の権利が与えられるため、当選確率が2倍になるのです。
抽選プログラムに自分で応募する方法
グリーンカード抽選プログラムは応募を代行してくれる会社が多くあります。しかし、抽選プログラムはオンラインでできるため、申込などに必要な簡単な英語さえわかれば、代行会社を使わず自分で応募することも決して難しいことではありません。
ただし、応募締め切り近くになると申込者が世界中から殺到するため、システム障害などが起き、エントリーできない事態になる可能性があるとアメリカ国務省は警告を出しています。そのため、締め切りより余裕をもって応募することが大切です。
グリーンカード抽選プログラムの必要書類
グリーンカード抽選プログラムに応募する際、必要となる書類はありません。住所や名前などの基本情報を入力します。
グリーンカード抽選プログラムに必要な写真
ひとつだけ応募の際に気をつけたいのが写真です。応募時には顔写真の添付が必要となりますが、顔の大きさやサイズなどが細かく規定されており、これに合っているものを用意する必要があります。
アメリカ国務省のサイトには、自分で用意した写真が規定を満たしているかチェックできるツールがありますので、それを利用して確認すると良いでしょう。
写真だけでなく必要事項の記載など、応募条件を少しでも満たしていないと、応募が失効となるのでご注意ください。また同じ人物が複数回エントリーすると失格となります。
グリーンカード抽選プログラムの費用
代行会社を利用して応募する場合は、1人あたりの費用が$50~100程度必要です。しかし、自分でグリーンカード抽選プログラムに応募するのなら、費用はかかりません。英語に不安のある方や心配性な方、確実に応募したいという方なら、代行会社を利用するというのも一つの選択肢でしょう。
もしも当選したら
もし当選したとわかったら、ビザ取得に向けて必要な書類の提出や健康診断の受診、大使館での面接などのプロセスが行われます。グリーンカード抽選プログラムに当選したとしても、アメリカ永住権を取得したわけではなく、永住権取得のプロセスを進められる権利を得たということに過ぎません。
当選からDVビザ取得へ
また、アメリカ国務省では、当選しても辞退する人がいたり、実際のビザ発行には至らない人がいたりするため、50,000人よりも多く抽選者を選出します。
申請資格はプログラム年次の9月30日までと期間が定められていますが、それより早い段階で50,000件のDVビザが正式に発行された場合は、その時点でプログラムは終了となります。
つまり、当選してもその後の手続きをすぐに行わなかった場合は、ビザ取得ができない可能性もあるということです。
ちなみに、抽選に応募するためには費用がかかりませんが、当選した後にDVビザを取得するためには所定の費用が必要となります。
永住権の更新
永住権を獲得できた場合、永遠にアメリカに暮らす権利が得られるわけではありません。グリーンカードは10年に一度更新しなければならず、長期間アメリカを離れているとアメリカに入国した際、理由を聞かれたり場合によっては失効となる場合もあり得ます。
市民権を取得するためには
もし日本人がDVプログラムで永住権を獲得できても、国籍はアメリカではなく、日本のまま変わりはありません。パスポートも日本が発行したものを使い、選挙権もアメリカでは無く、日本の選挙権を保持しています(在外選挙制度を利用)。
しかし、永住権取得から5年以上たてば、アメリカの政治や歴史に関するテストを受けて、市民権を取得することができるようになります。アメリカ市民権を取得すれば、アメリカの選挙権を得られることになり、そのほかの様々なサービスもアメリカ人と同等に受けられることになります。
ちなみに筆者は、自分で写真を自宅で撮り、PC上で加工して自分で応募しました。ただ当選した後は、様々な書類の用意や英訳などが求められるため、仕事をしながらそのようなことを行うのは難しくなります。それこそ書類不備などでせっかくのチャンスを逃すことはしたくないと思い、当選後のDVビザの取得にあたっては代行会社を利用しました。
「宝くじ」だと言われるアメリカの永住権抽選プログラム。アメリカの現トランプ大統領は、このプログラムの中止を提言しており、将来はなくなる可能性もあります。海外就職やアメリカ移住を考える方は、一度考えてみてはいかがでしょうか。
尚、アメリカのDVビザなどに関する情報は毎年異なりますので、必ずアメリカ大使館、アメリカ国務省のウェブサイトをご確認ください。
参考:
ハワイ・アメリカの移住&滞在に必要なビザ一覧・ESTA申請法
目指せ海外就職!「世界で日本人が活躍できる」職種&資格
憧れの海外就職!「アメリカで仕事を見つける」絶対知りたい4つの方法
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参考:在日米国大使館・領事館 移民多様化ビザプログラム(グリーンカード抽選プログラム) (https://jp.usembassy.gov/ja/visas-ja/immigrant-visas-ja/diversity-visa-program-ja/)